ココロ社(本社) このページをアンテナに追加

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2005-09-19

しかし、パッケージの裏に描かれている風景は、ぼくの想像とはまるで逆の世界でした。

小太りで、バンダナをしめ、レーサーがするような先の開いた革手袋をした40歳過ぎの男が小舟に乗って、眉間に皺を寄せながら網を引き揚げると、トビウオではなく、くさやそのものがかかっているという絵だったのです。

イラストの下には解説がありました。

くさや―

かつてはトビウオを加工して作っていたが、昭和20年、横須賀で自爆兵器「伏竜」の部隊が、天然のくさやが泳いでいるところを発見、酸素マスク越しにわかるくらいの鮮やかな香りだった。兵士たちは、クリーム色の平べったい魚がユーモラスに泳ぐさまを見て、自分の置かれている過酷な使命を一瞬忘れて微笑んだという。

今では、その臭気から、身寄りがない独身男性がおもに漁にあたっている。

驚きのあまり、思わずくさやスティックを噛み切ってしまいました。すると、当然ながら口の中にタンパク質の腐った独特の匂いが広がったのです。ぼくは苦しくなって喉をかきむしりました。幸いながらぼくは爪を切るのが趣味みたいなところがあったため、力いっぱいかきむしっても喉は無傷でした。その様子を見た猫がぼくのところに猛然と駆けこんできました。撫でろというのです。たしかにぼくは、「猫にとって都合のよい人間」なのかもしれません。口からはくさやの匂い。このかきむしり方で自分の背中や喉をかかれたら…と思うと、猫だけでなく、カブトムシやゴミムシダマシなど、かゆみが生じても打つ手がないはずの外骨格生物たちが「この人なら何とかしてくれるはず」と米粒くらいの脳で考え、寄ってきたのです。

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